株式会社アルテカの代表を務める野村紘一氏が日本の不動産業界に革命をもたらしたのは、日本がようやく高度経済成長の恩恵を受け、人々の暮らしが豊かになってきた1970年台のことでした。当時はまだ一戸建て神話が根強かった時代です。日本人の多くが、家を買うのであれば一戸建てが良いという固定観念を強く抱いており、一生懸命仕事をして一戸建てを所有することが、日本人にとって小さな夢でもありました。
そんな時代に野村紘一氏はアメリカに行き、日本国内での土地の有効活用がかなり遅れていることを痛感したのです。日本の国土の多くを山に囲まれているため、人間が住むことができる場所というのは限られています。そのような状況の中で土地の有効活用ができなければ、真の先進国に離れないと考えていました。不動産価値というのは景気に左右されるものであることが当たり前のこととして考えられており、取引されているマンションを見てもアパートの延長線でしか物事を考えていないといった雰囲気がありました。
そこで、野村氏は付加価値のある不動産商品を売り出すことで、景気に左右されず価値のあるものはその価値を保ったままで取引がなされる時代の到来を予見し、新たなニーズの掘り起こしに力を入れたのです。当時、そのようなことを考えている人はまだ周囲に一人もおらず、野村氏の試みは白い目で見られていました。絶対に付加価値のある超供給マンションは売れない、そんな声が周囲で囁かれていたのです。
しかしながら、野村氏は時代が味方をしてくれるという確信があり、強気の価格で億ションの販売に踏み切ったのです。野村氏の目論見は見事当たり、超高級マンションはあっという間に完売しました。怪訝な目で見ていた同業者は、野村紘一の成功を見て我も我もというように次々と超高級マンションの販売に着手していったのです。このように、野村氏の時代を見越した試みというのは、日本の不動産業界に革命をもたらしました。