野村紘一氏といえば日本に億ションを普及させた本人であり、当時1500万円が相場だった都内のマンション相場に一石を投じました。1975年当初は1億円以上の物件など売れないと考えられていましたが、実際は高い需要があったのです。現在でこそ億ションは普通に売れていますが、当時は購入したい人が存在しても、物件がない状態だったのです。そうした状況で野村紘一氏は億ションの需要は必ずあると確信し、1億円物件を誕生させました。するとこれが大成功して、飛ぶように売れることになったのです。それから5年間の間に業界は一気に活性化し、数十億円の物件も登場しました。
昔から高級マンションにステイタスを感じる人は大勢いたのです。欧米レベルの高級物件がほしいと考えている人はいましたが、日本にはそうした物件がありませんでした。また野村紘一氏が高級マンションを売り出したことにより、日本の土地の有効活用が促進された功績もあります。昔は住居と言えば一戸建てでしたが、これは狭い土地のことを考えると非効率です。一戸建ては多くの土地を必要としますが、住める人数は非常に少ないです。同じ面積ならばマンションを建てたほうが、土地の有効活用と言えるでしょう。もともと日本には今ほどマンションは存在しませんでしたが、マンション建設が活発になったことで人口密度も自然に高くなっていきました。
野村紘一氏は時代のニーズを先読みするのが上手で、これがライバルを寄せ付けない理由にもなっています。どのような業界にも言えることですが、成功すればそれを真似する人が出てきます。真似をされることで顧客の奪い合いが起こるわけですが、それを防ぐためには同じ手法を続けないことが効果的です。野村紘一氏は常に新しいマンションを誕生させることで、時代の先を進んでいたのです。同じ物件は作らないというスタンスを持っているからこそ、ライバルを寄せ付けない手法が可能になりました。